何も前触れもなく突然手足の麻痺が起こる、喋りにくくなるなどの症状が出現することを脳卒中発作という。なかでも脳血管が様々な原因で詰って脳細胞がだめになり症状を起こす場合を虚血性脳卒中(脳梗塞)と呼ぶ。
本年10月より虚血性脳卒中に対する新しい治療法が認可された。TPA(Tissue Plasminogen Activator)という薬剤を静脈注射する治療である。脳卒中発作をおこして発症後3時間以内にこの薬を使用すると脳血管に詰った血栓が融解し血流が再開し、壊死に陥る運動だった脳細胞が蘇生する。
脳細胞は他の臓器を構成する細胞より大変繊細なため、血流途絶などの侵襲に脆弱である。それで、脳梗塞を治療するにあたっては、ゴールデンタイムとでも言うべき治療効果の大変高い時間帯がある。しかるべき時にしかるべき治療をする必要があるのである。
この治療の優れている点は、患者さんが到着し、頭部CTスキャンでの診断がつけば、その後すぐに救急室においてでも使用が可能であるということだ。治療開始までの時間が短時間であることが脳神経細胞の蘇生に非常に有効なのである。
しかも閉塞血管再開通が高率であることが確認されている。一方で、この薬剤は使用法に特別な注意が必要なため使用できる施設が限られていて、脳卒中の専門医がいて、かつ脳神経外科手術に対応できる施設のみ使用可能である。
このTPA静脈注射は過去10年間に亘って世界の様々な国でいくつかの大規模臨床試験が行われ脳血管の高い再開通率と治療効果が確かめられてきた治療である。いままでの当院での使用経験でも、脳血流再開の割合はかなり高く治療効果も上がっている。虚血性脳卒中発作の治療はここにきて新しい段階に入ったようだ。

