長寿社会を迎えて転倒転落事故が多くなっています。
それについて、高齢者が頭部を打撲する危険が増えています。
慢性硬膜下血腫は軽微な頭部外傷を原因として、およそ2週間から1~3カ月たって硬膜下腔、すなわち頭蓋骨の内側にある硬膜という厚い膜と脳を包むクモ膜という薄い膜の間に血液が貯留する病気です。
男性高齢者に比較的多くみられ、外傷以外の誘因としてアルコール多飲者に多いことが知られています。
そのほかに脳に萎縮がある場合、出血傾向がある場合、脳梗塞の予防の薬(抗凝固剤)を飲んでいる場合、水頭症に対する短絡術などの術後、透析、ガンが硬膜に転移している場合なども慢性硬膜下血腫になりやすいことも知られています。
いったん硬膜下腔に出血した血液は吸収されにくいうえに被膜を形成します。
この血腫は吸収されないためゆっくりと増大し、知能障害、意識障害、頭痛、吐き気、片まひ、失語などさまざまな症状が出現し、放置すると死亡することすらあります。
そこで高齢者が頭部を打撲した後に頭痛や認知症あるいは脳卒中に類する症状を来たした場合には、MRIやCTなどの検査をして、できるだけ早く診断を確定するのが良いのです。診断が確定すれば、早期に外科的処置を行い血腫を除去し、脳の構造を正常に復元することが肝要です。
治療は穿頭血腫洗浄除去術と呼ばれ、比較的短時間の手術で血腫内容を除去することができます。
予後は良好で、適正な時期に外科的処置ができれば多くの場合元通りの社会生活が可能です。
手術により痛みが取れる疾患として、三叉神経痛のほかに舌咽神経痛があります。
症状は激しい痛みが一側の喉から耳にかけてあり、会話、食事、せきにより誘発され、冷たいものを飲むと特に痛みます。痛みは数秒から1分間ほど続きます。
原因の多くは、脳幹部の近くで血管が舌咽神経を圧迫していることですが、まれに腫瘍が原因のことがあります。
MRI検査で、腫瘍が無いことを確認し、舌咽神経を圧迫している血管の有無を調べます。
治療は、まずはカルバマゼピンという成分の薬を服用します。
痛みが激しく、薬の量を増やしても痛みを抑えることができなくなれば、外科治療を行います。
手術の方法は、耳の後ろに約5㎝程度の皮膚切開をし、500円玉程度の開頭を行い顕微鏡下に圧迫している血管を神経から離す操作を行います。
手術治療が大変効果的な疾患ですので、激しい痛みで食事などができずにお困りの方は、ぜひ脳神経外科を受診され相談されることをお勧めします。
セカンド・オピニオンというのは、日本語で「第2の意見」で、「症状や治療について自分の主治医以外の意見を聞き、参考にすること」をいいます。
主治医に、診断や治療方針の説明を受けたがどうしたらいいか悩んでいるときや、ほかに治療法がないかと考えているときに、ご自身で納得して治療を選択し受けるために、他の専門医の意見も聞いてみるという方法です。
セカンド・オピニオンを求める場合、まずは主治医に話して他ほかの医師への診療情報提供書を作成してもらいます。
その上で、紹介先を受診し意見を求めることになります。
セカンド・オピニオン外来を受診する場合は、セカンド・オピニオンは「診療」ではなく「相談」になるため、健康保険給付の対象とはならず、金額自己負担となります。なお、保健医療機関を受診し、保険証を提示して、一般外来での保険診療を希望する場合は、保険診療の取り扱いとなります。
脳の血管が急に詰まる病気が脳梗塞ですが、頸動脈が少しずつ細くなって狭窄し脳梗塞に至る場合があります。
食習慣の欧米化が進むとともに頸動脈狭窄病変が増えています。
そして、最近では頸動脈超音波検査やMRIの進歩により手軽で無侵襲にこの病変を見つけることができます。
もし頸動脈の直径が4割以下になっていると無症状であって内服治療している場合もでも次の5年間で11%の割合で脳梗塞の発生があると考えられます。
さらに、何らかの症状があって頸動脈の直径が3割以下になっている場合には次の2年間で脳梗塞に移行する割合は26%あると考えられています。
治療法としては、観血的手術である内頚動脈血栓内膜剥離(CEA)と血管内手術(ステント留置術)とがあります。
ふらふらする、転びやすい、手足の力が抜ける、しゅべりにくい、目がかすむなどの症状が前兆ですので、該当する症状があれば専門医を受診することをお勧めします。
ライフスタイル、特に食事習慣の欧米化が言われて久しい。
肥満に伴う疾病で、おなかに脂肪がつき過ぎて血管の病気になってしまう場合がある。メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)という表現をお聞きになった方も多いのではないでしょうか。
腹部CTscanで内臓脂肪の断面積を計算してみて100c㎡以上の断面積を持つ人の中には、この症候群に該当する人がいる。
日本人では男性で臍周囲径が85㎝以上、女性で90㎝以上の場合大体この大きさに相当すると考えられている。
メタボリックシンドロームの詳細は下記の図を御参照頂きたい。
概略では腹囲増大に加えて高血圧、高血糖、血中コレステロール高値のいずれか2つが加わったものである。
内臓に脂肪が蓄積すると脂肪細胞の出すアディポネクチンという物質が減る。
アディポネクチンとは脂肪細胞に特異的な分泌蛋白であり、抗炎症作用、抗動脈硬化作用、抗糖尿病作用を持つと考えられている。それで、メタボリックシンドロームの人は全身の血管が傷つき易くなり脳卒中や心筋梗塞になりやすくなるのである。俗にいう血管年齢が高いということは、加齢による動脈硬化が内臓脂肪の蓄積によってさらに加速していることに他ならないのである。メタボリックシンドロームと判断される場合血液検査のほかに、精密検査として脳波計や頸動脈エコー検査およびMRI/MRAを行ない、動脈硬化の程度や合併症の予後を判定するのが良い。
ところで、肥満度を表すもうひとつの指標としてBMI(ボディ マス インデックス)と言うものがあることを御存知だろうか。
体重を身長の2乗で除したもの「BMI=体重(kg)/身長×身長(m)」で二十二を標準体重と考える。
十九未満が『やせ』二十五異常が『肥満』とされる。健康人四万人を対象とした大規模調査では意外なことに男性でBMIが二十四・四五、女性で二十二・八の人言い換えれば少し小太りの人も長生きであった。判断の材料とする体重は何歳の時のものにしたらよいかも論じられなければならないが、長生きをした人が標準体重とは限らないという逆説である。平坦ならざる人生においては生活習慣病以外の疾病で健康を損なうときもあって、体重にも少しの余裕が必要とされるのだろう。その意味で、健康で小太りは長寿社会を生き抜くための最上策ではある。しかし、余病があればその限りでなく標準体重を参考にするのが次善の策であろう。
メタボリックシンドロームは血管の老化を速めてしまう。及ばざるは過ぎたるに勝れりと言われるが、身に覚えのある場合は食べ過ぎや運動不足の解消に十分なご配慮をお忘れなく。

三叉神経とは、顔や口に中など三叉神経により支配される部位に発生する痛みのことをいいます。原因として多いものは、三叉神経が脳幹部の近くで動脈などの血管により圧迫され発生するものです。
痛みの特徴は、突発的な電撃痛で持続時間は数秒から数分間です。痛みは顔面を触れると誘発され、痛みにより歯磨きや食事ができなくなります。痛みの場所は、片側で、頬、口、口の中、顎のあたりです。MRIにより三叉神経を圧迫する血管が認められます。
治療法は、まずテグレトールという薬を内服し、効果をみます。テグレトールが無効である方、副作用のために服用できない方で、痛みの為に日常生活に支障がある方には手術が勧められます。
手術の方法は、耳の後ろに約5㎝程度の皮膚切開をし、500円程度の開頭を行い、顕微鏡下に、圧迫している血管を神経から離す操作を行います。手術は2時間程で、症状の改善率は9割以上です。入院期間は概ね2週間です。